佐賀・長崎への旅

1日目(8/22) -出発,いきなり200キロ-

 朝5時に出発。今日の目的地はとりあえず島原。テントは持って行かなかったのだが1人用を買う資金的余裕はなく,今回は断念。テントなしでもかなりの量になってしまったのだが,操作には思ったほど不自由することなく快適に進む。ただ,スピードは平常時より2割ほど落ちるが。渡辺通を南下して3号線と合流。そのまま下って8時過ぎには久留米到着。カササギを見ながら筑後川横の公園で小休憩をとり,再出発。ところが,早くもここで嫌な事態が発生。「ぽつり。」そう,雨だ。レインスーツを持っているとはいえ雨の中の走行は路面に注意しないと滑るし,視界は狭まるのでできることなら避けたいものだ。ただ,この雨は運良く30分ほどで止んでくれた。気を取り直して進む。11時頃には佐賀県庁の近くに到着。ここには旧鉄道の駅沿いにサイクリングロードがありとてもいい感じ。この時点で走行距離は80キロ強。

ここで,走行距離について少し書こうと思う。ツーリングを初めたての頃は100キロが1つのヤマだ。気分的にも2桁と3桁では違う。しかし,これくらいの距離を走るようになると問題が生じてくる。一番大きなのはお尻の痛みだ。マウンテンバイクなどスポーツタイプの自転車のサドルには硬いものが多い。ジェルが入っているものなどもあるがそれでも長距離を走るとなるとズボンの縫い目との擦れなどにより痛くなってくる。それを解消するのに一番効果的なのはパッド付きのパンツだ。(通称レーサーパンツ)これは下着なしで直履きしなければ効果は期待できず,初めの頃は穿きづらいがあるとないのでは天と地の差だ。私自身実際に着用してみてその違いに感動した。ただ,安いものでも5000円は下らないのでこのときの私には余裕がなく買うことができなかった。まあ何とかなるだろう,そう思っていたのだがこれが今後に大きく響くこととなる。

 さて,佐賀で休憩をとったあとは207号線を下り,目的地を目指す。途中道の駅鹿島(鹿島市)には2時半頃着。少し遠回りをしたせいかこの時点ですでに走行距離は130キロ。ここで今日はおしまいにしようと思った。距離的にはもう十分である。しかしまだ夕方にもなっていない。まだ初日。行けるところまで行ってみるか。思い直して再出発。5時過ぎには諫早に着いたのだがこの間の道路は狭く,アップダウンは激しくてかなりまいってしまった。寝床を探し走っていくうちにいつしか辺りは暗くなってしまう。ちょうど見つけたのは無人駅。この日はその駐輪場で寝た。初日は200キロ。走りすぎだ。


2日目(8/23) -温泉と出会い-

 5時出発。前日の疲れはとれていない。とはいえまだ2日目。まずは島原を目指す。この辺りはきつい坂などがなく,快適に進む。6時半頃到着。島原城で小休憩をとり,次は深江町の道の駅へ。ここには雲仙普賢岳の土石流で埋もれた家がそのまま残されていてその威力を実感した。1時間ほどゆっくりして次は島原半島の最南端,口之津町を目指す。坂が多い,道が狭い。ずっと海沿いを走っているのに何だか山越えをしているような気分になってくる。それでもなんとか9時過ぎには口之津に着くことができた。南端まで行こうと,口之津公園へ。するとそこにはいかにも釣れそうな雰囲気を醸し出しているゴロタ浜が!!やっと竿の出番だ。とりあえず広範囲を探るためミノーを投げる。うーん,いい感じだ。いつ魚が飛び出してきてもおかしくない。

 ところが次に起こったのは最悪の事態だった。根がかりをはずそうとしていると嫌な音が耳に入ってきた。「バキッ。」そう,竿が折れてしまったのだ。しかも普通なら竿先が折れるのにこのときはグリップに近いあたりが折れた。無理矢理自転車に搭載してきたのが祟ったのだろう。終了である。やる気なし。公園で11時まで休憩。まあ済んでしまったことは仕方がないので気を取り直して小浜町の温泉へ行くことにする。ここ島原では山の温泉といったら雲仙,海の温泉といったら小浜というくらい有名らしい。なるほど道路沿いから湯煙が上がり,いかにも温泉街といった感じだ。140円の共同浴場へ入り,疲れを癒す。

 やはり旅をしていたら温泉には入りたくなる。精神的,肉体的疲労をとる意味で非常に効果的。風呂とストレッチはツーリング時には毎日欠かさず行いたいものだ。この後は野母崎方面へ行くつもりだったのだがここまでに予想以上の距離を走ってしまい,今後(あと2日)の事を考えて諫早に戻ることにする。

 前日目を付けておいた公園で寝ようと思い,休んでいると赤ちゃんを連れた20代後半くらいの女性が話しかけてきた。しばらく話をしてその方は帰っていったのだが30分ほどすると戻ってきて「夕食をまだとっていなかったらうちで一緒に食べませんか。主人も待っていますので。」と言う。これまでこのような経験がほとんどなかったので戸惑ってしまったが向こうの押しが強く,せっかくだからということで頂くことにする。これで夫が強面の人だったらどうしようかな。ちょっと不安だったがそんなことは全然なく,とても優しいご主人だった。お酒も頂き,非常に感謝。毎晩二人でお酒を飲んでいるという本当に仲のいい夫婦だった。うらやましいばかりである。西原さん,本当にありがとうございました。今日の走行距離130キロ。


3日目(8/24) -次第に痛みが・・・-

 6時西原さん宅を出発。疲れもいくらかはとれ,朝の涼しい時間帯にできるだけ進むことにする。諫早から大村市へ入る。長崎空港の横を通り,ハウステンボスへ。海沿いにある国道34号は道幅が狭く交通量も多いところが結構あるのであまりお薦めしない。所々に集落への分岐があるので見つけたらそちらへ行くのが無難だと思う。とはいえその道もまた34号とつながっているのだが…

 ハウステンボスの次は佐世保へ。久しぶりの大きな町だ。昼食をとり,今後の進路について考える。平戸へ行きたいが地図を見る限りでは坂やカーブが多そう。時間もあるかどうかわからない。かなり迷ったが今回平戸方面はパスすることにした。佐々川を上っていく。吉井町を通過し,国道40号を通って松浦市へ。このころ私のお尻はかなりの悲鳴をあげていた。20分に1回位のペースで小休憩をとらないと痛くて走っていられない。レーサーパンツさえ買っていれば…そう思ってもここは山の中。今回は我慢するしかない。どうせ明日帰るんだしなんとかなる。そう言い聞かせるしかなかった。この時点で3時,走行距離は110キロ。早く帰りたいので日が沈むまで頑張ることにする。204号を通ってこの日は伊万里湾の東岸まで行くことができた。夜は伊万里湾沿いにあるサイクリングロードの空き地で過ごす。花火や雷,救急車,犬の鳴き声などかなりうるさくほとんど眠れなかった。走行距離は150キロ。


4日目(8/25) -初めての一人旅終了-

 犬の鳴き声で目が覚める。午前1時半。寝付けない。しばらくぼーっとしていたがどうせ眠れないのなら先へ進もうということで深夜の出発。しかし走り出すと眠気はやってくる。後悔したがここは山の中。休憩できるところを探しているうちに福島町へ。ベンチで朝日を拝むまで一休み。ここから唐津へは52号を通ることにする。これが大正解。山の合間を抜けていく道で勾配はあまりなく,車も少ない。気持ちのいいひとときを過ごす。そのあとは202号から唐津市へ。8時着。松浦川沿いの公園で朝食をとる。

 この川はシーバス(スズキ)で有名なところでシーズンになると多くの釣り人で賑わう。ぱっと見ただけでも良さそうなポイントがいくつかあり,私も釣りをしたい衝動に駆られる…でも竿折ってしまったんだよね。無念。体力はある程度回復し,ここからは一気に自宅へと向かう。海沿いにある202号を行ったのだが,二丈町での道路状況は最悪だった。路側帯の狭さ,道行くトラックの多さとそのスピードといったら本当に身の危険を感じた。危なくて走っていられない。せっかく景色のいいところなのに,そんな余裕などない。あそこは何とかして欲しい。しかし,後日(1年半後)走ったときには,それほどの恐怖を感じることはなかった。交通量などは平日と休日,時間帯,天気などによって大きく変わるもの。他人の情報(特に交通情報など)は参考程度にした方がいいかもしれない。

 深江に入る頃からはそんな危険もなくなり,落ち着いて進む。前原市では水田のど真ん中をゆっくり走ったりして昼過ぎには自宅へ到着。100キロほど走った。全走行距離は580キロ。距離は1つの目安にしかならないが,初めての長距離ツーリングとしてはまあまあだったのではないだろうか。満足。しかしお尻は炎症を起こして真っ赤に腫れ上がり,その後3,4日はあまりの痛さのため自転車に乗ることはおろか,歩くたびに激痛を耐えなければならなかった。